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CATEGORYROM
大会は俺が勝って終わった。

そこそこに強い奴はいたが、明らかに俺のキャラに慣れていなかった事が大きかった。
それに、難しいだけでダメージのあまりないコンボばかり使ってくるから、何だか肩透かしを食った感じだ。

「さすがですね。僕は小田さんとやる前に負けちゃったけど」
高津が言った。何か含みを感じるのは、俺の被害妄想だろうか。

「そう?対策が出来てないだけだよ」
そう言いながら、何かバツが悪い気もしていた。
常連たちは明らかに不満顔だったからだ。

もう出よう。そう思い、俺は常連達に近付いて言った。
「今日はありがとう。良ければまた」

常連達は形通りの挨拶をしたが、その中でも少し強面な感じの一人が言った。
「優勝されちゃったね。でもなんか、ちょっと寒かったかな、きみ」

寒いっていうのはちょっとしたスラングみたいなものだ。
強い行動しかしないから対戦しても面白くないとか、だから場が冷えて寒い。まあそういうような意味だ。

俺は瞬間的に苛ついてしまい、ちょっと強めに反論した。
「まあ、ちょっと珍しいキャラだって事もあるし、対策できてないのは仕方ないよ。
でもさ、寒いって誰のどういう基準なんだ?大会なんだから勝つ為にやるんじゃないの?」
少し険しい表情をしていたかもしれない。強面な奴にほど、強気で返してしまう癖が俺にはあった。

「なんか、下段とか投げが多いし・・・下がるじゃん」
「それ、何か悪いの?」
「うーん、わからないならいいよ、別に」

そいつの言っている事はなんとなく伝わった。

何か自分が否定された気がして頭には来たが、揉め事を起こす気はない。
それにこういう事は以前にもあったから、そんなに驚きという訳ではない。
白けた俺は、いつものホームに戻ろうかとそのゲーセンを後にした。

何か釈然としない気持ちで歩いていると、後ろから高津が追いかけて来た。

「小田さん、すみませんでした」
「…」
「あそこって、美学っていうのかな。ローカルルールみたいなもので、下段は使わないとか、ポリシー持ってる人多いんです。悪い人達じゃないんですけど」
「美学ねぇ」
俺は鼻で笑った。
「でも、僕はまあどちらかというと小田さんに近くて。実はちょっと嫌われてると思います」
高津は苦笑しながら言った。

「なんだか不愉快な思いをさせてしまっていたらすみませんでした」
「いいよ、別に。俺もちょっと大人げなかったかな。でも、あそこはあんまり俺には合わないかもね。高津君とはやってみたいから、たまには俺のいるゲーセンにも来てよ」
高津は頷いてしばらく俺を見ていたが、戻っていった。

俺はいつものゲーセンに入り、缶コーヒーの蓋を開けて店内を見渡した。
響子の姿はない。


無意識に響子を探している自分に気付き、少し戸惑いを感じた。


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・ローカルルールについて

当時は今よりゲームのバランスが悪かった事もあり、待ちハメ禁止!なんていう貼り紙を見る事もありました。
それが行き過ぎた形として、プレイスタイルの是非にまで論争が及んでいました。
これは今でも少なかれある話とは思いますが、当時は今とは比較にならなかった。

特に自分のやっていたゲームでは、相手に自分のルールを押し付ける人が多かった気がします。
今回のような揉め事になる事も実際にありましたし、自分は割とレアキャラを使っていたため、あからさまに嫌われる事もありました。

その是非についてはここでは言及しませんが、まあそういう時代があった、という事を伝えたかったのです。


さて、始めという事もありここまでは早いペースで更新してきましたが、次からは少し間を開けるつもりです。1週間くらいを想定しています。
このペースだとすぐにストックが尽きてしまうので・・・

今のところ年内に終わればいいなという想定でおります。
お付き合いいただけたらうれしいです。

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CATEGORYROM
夜勤明けの金曜日の夜、俺は踏み切りの向こうのゲーセンに行ってみる事にした。

地下の店だ。階段を下ると、徐々にゲームの音量や人の喧騒が大きくなってくる。胸が高鳴る。俺の好きな瞬間だった。
店のドアを開けると、3組ある対戦台が人で埋まっている。

「へえ」
俺は少し驚いた。俺がいつも行っているゲーセンとそんなに離れていないのに、まるで活気が違う。対戦している連中も声を上げたりして、楽しそうだ。何か違和感みたいな物を感じていた。

自動販売機で缶コーヒーを買ってから辺りを見渡すと、高津が誰かと話しながらギャラリーの中にいた。

「高津君?」
「あっ。来てくれたんですね」
ギャラリー連中が俺を見る。
「あ、この人、前に話した人だよ。あのキャラの」
高津がそう言うと、ギャラリー連中は頷いたりしながら目線を対戦台に戻す。
よそ者に対する典型的な反応と言った感じだが、ゲーマーは内気な奴が多いので、あまり気にしなかった。

「今日はちょっとした大会をやるんで、結構人が来てるんですよ」
俺は少し興味をそそられた。
「大会なんだ。どうりで」
「ええ。出てみますか?あーあの…まだお名前を聞いていなかったですね」
「小田だよ。小さい田んぼと書いて小田」
「では小田さんもエントリーという事でいいですね」
「いいよ」

大会までは少し時間があったので、対戦台に乱入する事にした。
10戦ほどやったが、俺が負ける事はなかった。
常連らしき連中が少し熱くなっているのがわかる。
「んー、わかんねーよコイツ」

(勝てるな)
内心で呟いていた。
俺のキャラとの対戦経験が少ない様だし、皆決して下手ではないが、高津以外は何かぬるい印象だ。

白板に手書きで参加者の名前が書き込まれ、16人のトーナメントが始まった。


====
Twitterなどで思ったより反応があり、ありがたいです。
正直、恥ずかしい気持ちもあって、毎日消そうかなと考えたりしますが耐えたいと思います。

ちなみにこの小説は話数のみでタイトルが付いていませんが、ROMというカテゴリーにまとめています。
ROMというのはそのままの意味、つまりREAD ONLY MEMORYの事を指しています。

もう書き込まれてしまっていて変える事ができない記憶、そして当時ROMという言葉が今よりも頻繁に使われていた(ROMカセットとか)、そういう感じの意味合いで付けました。

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CATEGORYROM
1990年代。
都心から電車で一時間ほどの、町田という街のとあるゲームセンター。

俺はこの近くの会社で働いている。
最近、地元から離れたこの場所に転勤になったので知り合いもおらず、いつしか夜は一人でこの街をぶらつく様になった。
大きいが、あまり治安が良いとは言えない街ではあった。駅の近くに交番が2つあるのが、それを物語っていた。
駅の反対側には、何やら女性たちが立っていたりするエリアもある。

俺は昔ゲームをよくやっていたし、他にやる事もあまりないので、この街に沢山あるゲームセンターの一つに居つくようになった。

今のゲームセンターで流行っているのは格闘ゲームだ。
俺も例に漏れず格闘ゲームをやる事が多かった。
人間相手の駆け引きや勝った時の快感はそれ以前のゲームを遥かに上回っており、空前の格闘ゲームブームとなっている。

今では少年の頃に遊んでいたようなゲームはあまり見かけなくなっていた。


俺は仕事を上がった後、いつもの様に対戦相手を求め、そのゲーセンで二時間ほど過ごしていた。

「ちっ」
舌打ちして席を立つ。

今日は平日のせいか対戦相手がおらず、一人用で最後までプレイする事が何度も続いていた。

「今日はすいてるねえ」
後ろでその様子を見ていた響子が言った。ショートカットに大きな目、長い睫毛。背が高くてほっそりとした、まるでモデルみたいな女の子だ。なぜかゲームが好きらしく、このゲーセンには殆ど毎日来ている。
何とは無しに話すようになった。

ゲーセンにはただでさえ女の子は少ないので、彼女はとても目立っていた。
常駐のオタク達が皆チラチラと視線を送っているのを知っているが、話しかけるのは躊躇うようだった。

俺は彼女に、その辺にいる女の子とは何か違う物を感じていた。
だいたい、普通の女の子はこんな薄暗くて煙草臭い所には来ないだろう。
彼女はなんでこんな所に来るのだろう。俺は不思議に思っていた。

「響子ちゃん、入って来てくれよ」
「嫌だよー。小田君ガチじゃん。ボコられて終わるからいいよ」
「対戦はガチだから面白いんだよ」
「はいはい。ゲームで勝ちにこだわって、子供かよ」

そんな会話を交わす程度の間柄にはなっていた。
いつしか、俺は彼女と会うのを楽しみにこのゲーセンに来るようになっていたかも知れない。
俺は女家族で育ったせいか、どうも女性が苦手だった。近くで嫌な面ばかり見過ぎていたのかもしれない。

でも彼女とは、話していて疲れないというか、波長が合うような気がしていた。
そんな女性は初めてだった。
同族というと何かおかしい気がするが、そんな気がしていた。


その日は結局対戦相手は現れなかった。
画面に流れるエンディングを見ながら、今日はもう帰るか。そう思った時の事だった。

「あのう」
「え?」
先ほどから俺のプレイを見ていた男だ。
俺より少し年下だろうか。身奇麗で真面目そうな青年だ。多分、学生だろう。

「よくここに来ていますよね…何度か見掛けて」
「…ああ。君は?」
「高津と言います。今、このゲームならここより盛り上がっている所があるんで…良かったら今度来てみませんか?」
「へぇ。どこ?」
「駅の踏み切りの反対側のゲーセンです」

そこなら入った事はないが、知ってはいた。
「ああ、あそこ。じゃあ今度行ってみようかな。でも何で俺に声を掛けたの?」
「このゲーム、そのキャラを使っている人はあまりいないじゃないですか?色んなキャラと対戦したいですし」
「うーん、ま、そうかもね」
「まあ、気が向いたらでいいんで…それじゃ」
高津はそう言ってそのゲーセンから去っていった。

「あそこのゲーセンの常連だったんだね、あの人」
響子が言った。
「あたしはあそこ、あんまり好きじゃないな。うまく言えないんだけど」
「そうなの?」
「うん。小田君、行くの?」

俺は煙草に火を点けてしばらく考えていたが、次は、その踏み切りの向こうのゲーセンに行ってみるか。
そういう気持ちになっていた。

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CATEGORYROM
2017年7月。

とある蒸し暑い夜、私は急ぎ足で人混みの中を歩いていた。
散髪を面倒くさがって、少し伸びすぎた髪が肌に貼り付いて不快だった。
おまけに風もまったくない。さっさと空調の効いた場所に入りたいと思う。

そんな気候とは裏腹に、私の心は乾燥しきっているような気がしていた。
いつからこうなったのか、よく覚えてはいないけれど。


今夜は古い付き合いの友人と久々に呑む約束をしていて、仕事もそこそこに切り上げて秋葉原へ向かっていた。
どうせ急がないといけない仕事などあまりないのだ。

待ち合わせ場所は友人が指定したゲームセンターだった。久しく遠ざかっていた場所だが、入った瞬間に何か心がざわつくのを感じた。
いつ振りなんだろう?

ずらりと並んだ大型筐体のゲーム、タッチパネルで操作する音楽ゲームなどがあって、若い子達がゲームを楽しんでいた。
驚いたのは、若い女性が結構居たことだ。

レトロゲームフロアに足を踏み入れると、かすかに見覚えのある後ろ姿があった。声をかける。

「おうおう!小田君?久し振りだなあ」
友人の名は市村といった。歳は私の3つ上になる。
「イチムラさん」
自然と顔が綻ぶのを感じた。
市村さんとはもう15年以上会ってはいなかった。
ネット上のSNSで偶然再会し、飲もうという話になったのだ。

ゲーセンから出て、居酒屋に向かって歩く。
金曜の夜だ。
大通りは混雑していて、歩くのも大変だった。

「秋葉原も変わったよねえ」
市村さんがしみじみとそう言う。
「そうですね。私は最近仕事でよく来るけど。外国人がすごく多いですね」

適当な居酒屋を見付け、お決まりのビールを注文し、乾杯する。
しばらくは昔話に花が咲いた。

市村さんは私と同様に普通のサラリーマンで、結婚しているが子供はいないこと、最近家を買った事などを聞いた。
私も似たようなものだった。


市村さんと知り合ったのは1980年代のゲームセンターだった。

当時の私は、家庭にも学校にも居場所がなく、漠然とした疎外感の様なものを世の中に抱いていた。
そんな時、ふとした切っ掛けでゲームセンターというものを知った。


むせるような煙草の匂い。耳が悪くなりそうな騒音。メダルゲームに興じる不良。職業も年齢も不明なおじさん。
何せ、学校の先生が、うちの生徒は来ていないか?と巡回に来るようなところだ。
お世辞にも良い場所とは言えない筈だったが、何故かその空間にいる時だけはうんざりする現実から逃れられるような感覚があり、入り浸る様になるまで時間は掛からなかった。

当時、私と市村さんは全くの他人だった。何の繋がりもないのに、どうやって知り合う事になったのか。
当時のゲームセンターにはコミュニケーションノートという物が置いてあって、そこで共通の話題があったのだ。今で言うとSNSの凄く狭い版だ。
もっとも、大学ノートに好きな事や好きな絵を書き込むだけなのだが。

そのゲーセンは、今思うと、ある筋の人がやっていたのだと思う。
だからノート設置なんていう気の利いた事はしない筈だったが、バイトをしていたゲーム好きの高校生のお兄さんが設置してくれたようだった。

いつの間にか顔を合わせたら話すようになり、そこからまた似たような知り合いが増えていった。
私にとっては生まれて初めての心地良い空間だったかも知れない。
本名も知らない。
むしろ本名など知らない方が良かったのだと思う。本名というのは、自分ではどうしようもない、逃れられない現実だから。
だからアルファベット三文字のスコアネームでお互いを呼び合っていたし、皆それでいいと思っているようだった。

しかしそんな時代も長くは続かなかった。部活だバイトだと色々と忙しくなり、そのゲームセンターにしばらく行かなかった。
ふと思い出して行った時、そこにあったのは何もないテナントだった。

それ以来、市村さん達と会う事はなかった。
当時は携帯もスマホも無かったから、連絡先もわからない。
そうして、自分の「その時代」は呆気なく終わった。


飲みの席ではその当時の話が延々と続いていたが、ふと今現在の話になる。
「小田君は最近ゲームやってるの?」
「いや、全然ですよ…仕事も忙しいですし」
「そうだよな、俺も…あ、そうだ」
「何です?」
「なんか最近、ゲームのプロってあるみたいね」
「プロですか?」
「なんかTVで見たんだよ。こないだアメリカで大きな格闘ゲームの大会があって、凄く盛り上がってたみたい。何千人とか参加しててさ。優勝したのは日本人のプロだってさ」
「へえ…凄いすね。そんなものあるんですか、今は」
市村さんがスマホを操作して、その件の記事を見せてくる。
斜め読みしていると、ある写真が目に留まった。

そこには数え切れない程の観客と、眩いステージでガッツポーズを取っている青年が映っていた。

何か既視感がある。

この優勝したというプレイヤー。どこかで会ったような気がした。しかし、はっきりとは想い出せなかった。


記事を読みながら、私は少し鼓動が高鳴るのを感じた。


行きつけのゲームセンターが無くなり、市村さん達と会わなくなった数年後、私には格闘ゲームをやっていた時期があった。

当時、格闘ゲームが一大ブームとなっていた時期で、有名プレイヤーがTVに出ていたり、ゲームセンターでは殆どの台が格闘ゲームで埋め尽くされていた、そんな時代だった。

私は、仕事より、食事よりも、格闘ゲームを優先させていたくらいのめり込んでいた。
熱狂。
今となっては失ってしまった感覚だったが、その時代、確かに私は熱狂していた。

目を瞑ると、その時の事が昨日の事の様に思い出せた。

それは「その時代」の少し後、1990年代の事だった。


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突然ではありますが、これは、自分が昔を振り返ってみて書いてみた、まあ小説もどき?みたいな感じのものです。
本当に稚拙な文ではあると思いますし、自分の性格的に急に恥ずかしくなって消すかも知れないですが、もし何か反応があったら続きを載せてみたいかなと思っています。
突然止めてしまったら申し訳ないですが、何かご意見などいただけたらうれしいです。。。

近況

CATEGORYOther
どうも谷底です。

何か書く事は無いだろうかと、気になったトピックスなどをちょいちょい書き始めては見るのですが、どれもうまくまとめられず…。うむ。

ところで、マスターカップが終わって結構経過したのですが、それ以来全然鉄拳をやっていません。キャリバーも。

それには理由があって、最近またマインクラフトを始めてしまって。
で、今夜は鉄拳かキャリバーやろっかな?と思う日もあるのですが、奥さんがマイクラ頑張っていたりすると、せっかく珍しくゲームやってるんだし止めるのも野暮だなあ…という感じで。

それにしても、普段あまりゲームをしない奥さんがハマれるマイクラってやっぱり凄いゲームですね。

キャリバーに関してはちょっとしかやれていないんですが、個人的にはリバーサルエッジ等のシステムまわりがあまり好きではなくて、二の足を踏んでしまう感じですね。なにかきっかけがあればやると思うんですが、今のところ時間も取れない感じではあります。

鉄拳7の家庭用が出てからこんなに格闘ゲームやらない間隔が空いたのは初めてだと思うんですが、いい機会なので積んでいたゲームをやったりしてみようかなあ。と思ってます。

あ、マイクラで遊んでくれる人は随時募集中です^^

それでは今日はこの辺で。